背中に傷はインスタ映え。

時は来た。

隙あらばどことでもコラボするコラボ通り魔ことヒプマイさんが三度目のスイパラ襲撃を敢行したのである。で、あればこちらもノコノコと出向くしかあるまい。

主にキャラの絵のデザイン等に変更があるだけで、基本的なシステムは変わらず「コラボ限定メニューを買ってランダムでコースターを貰い、後は各々好きなグッズを買い漁れ」と言うシンプル極まりないスタイルである。ヒプマイさんのストーリーとは打って変わった分かりやすさ、とても良き。出来ればストーリーとか世界観の構築もこれくらいキチンと府に落ちる感じにしてほしいものだ。

 

なんちゃらスパゲティーだ中華丼だカレーだと色々用意される中で、ぼくの推しである独歩くんのコラボメニューが「最中とエナジードリンク」と言うギャグに振りきった代物である事を古の日記に書き記していたのだが、今回は「ココナッツミルク炭入り」であった。毎回毎回期待を裏切らず「他のチームのコラボメニューがとても羨ましい」と言う気持ちになる奴であったが、ちゃんと頼んだ。こういう所でブレる奴にランダムは微笑んでくれないと去年学んだからである。

飲みたくもないココナッツミルク炭入りを澄んだ瞳で注文した後に受け取ったコースターには悠然と独歩くんが輝く…と言うのが台本だった筈なのだが、店員がポンコツだったのか手渡されたコースターに鎮座していたのはラムダであった。とてもよい笑顔でコースターに居座ってやがった。麻天狼ファン全員に嫌がらせする為に虎視眈々と飛び出るチャンスを伺っていたのではないか?と言うような都合の良さであったが、ここだけの話、僕はジャクライがそんなに好きではないのでラムダくん大歓迎であった。

まぁそんなジャクライくんも最近最年長と言う特徴を新キャラにサクッと奪われると言う憂き目にあっており、ちょっと可愛そうではあるのだが。しかし30半ばをジジイジジイと煽りまくるラムダくんにとって40後半の新キャラは一体なんなのだろうか?遺骨か?

 

話が逸れたが、とにかくコースターは負けた。しかし僕にはアクリルスタンドランダム勝負が残っている。過去2回挑んでどちらも惨敗していると言うスイーツパラダイスに来たのにしょっぱい結果に終わる苦い思い出が脳裏を過るが、終わり良ければ全て良しと言う至言の通り、ここで独歩くんを華麗に引けば過去は無かった事になるので何も問題はない。

逆に過去に独歩くんを引いていたとしてもここで引けなかったら押されるのは敗者の烙印である。世間とは容赦の無いもので、100回勝利を納めたとしても一回負けたらその瞬間「あいつは終わった」等としたり顔で言ってくる物なのである。

そしていつでも美談を求めさまよう妖怪でもあるので、100回負けても一回勝てば「感動をありがとう!!」とか同じ口でほざいてくるのである。ちなみにその後は即座に忘却、新たな感動を探しに旅に出る。人間はいつだって無人の荒野を行くウェイフェアラーなのである。そんな永遠に満たされない化け物に感動をあげる事に失敗すると前途の通り罵詈雑言を吐き散らかすだけ散らかして帰って行くのでなんとしてでも勝利を納めるしかない。

 

最悪、ランダム勝負に負けたとしても僕が向かったスイーツパラダイスは新宿店。去年、闇商人達の闘技場として占領されていた闇市である。手に入れたカードを片手に店を縦横無尽に駆け回り交換していく事によって独歩くんと言う名のワンピースを我が物にするのは難しくないと踏んでいた。

しかし、僕が戦場に向かったのは先週の金曜日。地域によっては大雨警報がでていたとんでもねぇ豪雨の日であった。客が、少なかった。

初めは「人が少なくて快適でござるなぁ」等とホクホク顔でケーキを瓦礫のようにお皿に積み上げていたのだが、すぐに気づいた。闇商人達が、いねぇ…と。

恐らくプロの商人達は客の入りが悪い事を即座に察知、休息する事を決めたのだろう。慧眼である。人がいないのに商品を並べても仕方がない。道理である。

そんな状況でノコノコとスイパラに出向く頭の足りない奴等はそもそもコラボになんの興味もない家族連れとか、ノホホンと当たった外れたとその場でキャッキャッキャッキャ楽しむだけの平和の民達だけであった。

去年の、店内をケーキも持たずにウロウロと闊歩する選ばれし戦士達の勇姿などどこにもない。店を歩いているのはケーキかドリンクを片手に持った争いとは無縁の市民達だけであった。僕に人の心があれば輝く平和な笑顔に心打たれる所であったが、悲しい事に心が砂漠なグールだったので「チッ、つっかえねぇなぁ、テーブルにガチャガチャ並べろや」と毒吐きまくっていた。

あの魔の新宿店が雨の日の奇跡と言わんばかりに戦場と化す運命から解き放たれていたので自分の運に全てを任せたギャンブル勝負に出ざるを得なくなり、とりあえずケーキを食べた。まずはケーキを食べて落ち着こうと思った。

ある程度お腹一杯になり、もういつ糞みたいなランダム結果を前にしても雄叫びをあげながら店から走り去れると言う状況にしないと勇気が出なかったのである。俺は、弱い。

 

意気揚々と誰もいない物販コーナーに出向くと、いつもの鬼畜ランダム商品の群れと一緒になんかでかいのが置いてあった。なんか、選べるでかいアクリルスタンドが置いてあった。

「え?こんな甘い展開があっていいんですか?」と怖くなるレベルに都合のいい代物である。一個750円で12種ランダム勝負だったものが、サイズをでかくして3000円ちょい払えば確定になるのである。こんなもの、こっちを選ぶに決まっているであろう。

スイーツパラダイスでケーキ以外にも甘いものがあったのか…と衝撃を受け、逆にこんな甘い話に易々と乗っていいものか?と疑心暗鬼に陥り無意味に商品を手に取り置いて、手に取り置いてを暫く繰り返してしまった。これを買った瞬間に黒服を来た男達がワラワラと店の奥から沸いて出て「貴様に戦士を名乗る資格はない。この腰抜けが!!」と地下労働施設に連れていかれる可能性もあるのである。やはりここは勇気を出してランダム勝負を仕掛けた方がいいのではないか…?

 

そこで一回話を先伸ばしにするべく、クリアチャームセットを探した。これはチームごとに1セット確定で2200円の可愛い奴であり、財布につけようと思っていたのだが、なぜか池袋のしか残ってなかった。池袋のだけが10個ぐらい並んでおり店員に「ここにある分だけなんですか?」と隠しきれない疑いの眼差しを向けて問いただして見たのだが「はい」と二文字で切り返されて終わった。肯定は、強い。

やはり、否定くんも「こんな時だけ都合よく俺を求めるなよ!」とご立腹なのであろう。「ちょっと確認しますね」とか希望を持たせる事もなく一瞬で完膚無きまでのイエスを叩きつけられた。僕がマンボウだったら死んでいたであろう。

 

本来確定で手に入る筈だったチャームセットでこれである。ダメだ。臆病者の謗りを受けようが関係ない。笑いたければ笑うがいい。俺は…逃げるぜ!

こうして、見事平和の民の仲間入り。実に日本的な迎合を果たし3000円払ってイエーイとスイパラを後にしたのであった。全く、戦わなかった。

 

この話を従兄弟にしたら「正解だよ!!人気キャラのトレードなんてマジ地獄だから!」と言われたので、これでよかったのであろう。戦わないって、素晴らしい。ラブアンドピース。

 

晴れやかな気持ちで店を出たまではよかったのだが、豪雨は絶賛継続中であった。戦う意思バリバリ殺す気満々で降り続いており、僕が叫ぶ平和など軽く雨音でかき消された。

家を出る頃には既に雨が降っていたので普通に傘を差して出掛けたのだが、頭が悪いので「雨が降ってるから折り畳み傘も持っていこう」とイソイソと鞄に詰めていた。当然出番は無かった。

しかし、鞄に雨が染みまくっていたので濡れはした。差されもせずに雨に濡れまくると言う傘のプライドはもうズタズタと言う悲しい事件だったのだが、鞄にいれていた財布までずぶ濡れになっていたのでそれどころでは無かった。

お札も当然ずぶ濡れ、財布の中にしまっていたラムダコースターも濡れていた。一瞬「え?溶けた…?」と勘違いする濡れっぷりであり、慌ててお札と一緒に洗濯バサミに挟んで干した。諭吉と肩を並べた男、それが僕の所のラムダである。