IQ無き虐殺

今さら空の軌跡FCと言う割合古い感じのゲームをやっている。

シリーズの新作がPS4で出ていて、それを弟がやっているのだが、弟は主人公以外は基本的に美少女しか使ってくれない為、イケメンを使えデモを起こして隣でギャーギャー騒いでいたら「じゃあ自分でやったらええやろがい!」とごもっとも過ぎるお怒りを食らったのがきっかけである。

しかし隣で見ているだけでも、過去作から続投してまっせーと言うキャラクターがジャンジャカ出てくる上に話も繋がってますよねこれ…って感じの匂いがプンプンしている為、「じゃ、じゃあ…過去の奴からやってみるよ」となった訳だ。

イケメンとローマは一日にして成らねぇのである。

 

しかし、前々から存在を知っていたこの軌跡シリーズ、弟がずっとやっていたので、イケメンがいる事も分かっていたのにどうして手を出さなかったのかと言うと、完結する気配が全く見えない上に、シリーズもそこそこ進んでしまっていると言う中途半端すぎる中洲みたいな進行状況だからだ。エヴァンゲリオン等も全く同じ理由で手を出していない。

今さら一からチマチマ進めた所で、待っているのは圧倒的孤独による飢餓だ。

これが完全に完結してる昔のナニカにハマったのなら、発散しどころも話し相手もいないパッションを延々抱え続けてんー!んー!と胸を叩くのも乙な物であるが、「まだ進行している」と言う質の悪さはヤバイ。

キャラクターの性格とか、大まかなシナリオは覚えていても細かい事も覚えてると言うことはほぼない為、既にあらたなステージへと移行してしまっている連中に「これがぼくのナウ!」と話しかけても「あ、あー…そんなことあったかもー」みたいな微妙な反応をされて気を使われてる感だけを味わう羽目になるのだ。僕は美食家では無いので「ほっほっほ、絶望は最高の調味料でおじゃる」等と、それを楽しむことは出来ない。

アニメとかならまだ見返しもしやすいが、ゲームはその点圧倒的に不利である。

ただドラクエとFFはなぜか全員異様に昔の作品について覚えているため、下手に話をすると凄まじい物量の情報でアタックを仕掛けられ沈む羽目になる。古いゲームに適切と言う物はない。過剰か不足かの2択である。

ロマサガとかも中々手強い。

 

とかく、話し相手と熱量が違うことほど悲しいことはない。追い付けるまでは仕方のない話ではあるのだが、追い付くまでやたら時間がかかるだろう道のりが見えているのがキツい所である。そりゃぁみんなこぞってプレイ動画とか言うロープウェイに乗り込むわと言う話だ。僕だって山になんか登りたくない。

が、ちゃんとプレイを重ねてきた弟相手に「プレイ動画で見たんだけどさ~」と話しかけるのは余りにも情けないなと思ったので、せっせと匍匐前進で山を登り始めた訳だ。

弟がPS4で3Dを操ってる時に、僕はPSPでドットをポチポチである。ひとつ屋根の下で時空が歪む。

 

ゲーム自体は好きなので、特に苦もなく進められていたのだが、このゲーム、ギルドの依頼と言う有り体に言うと「やるかやらねぇか好きにすればいいけどやった方がお得よ」と言うお使いイベントがワラワラ用意されていて、その中に「暗号を頼りに特定の場所にいく」みたいな物がある。

 

僕は自分の頭が言うほどは悪くないと思い込んでいるのだが、たまにこういう暗号とか仕掛けられると、仮想空間でリアルの頭の悪さを思い知らされると言う次元の壁を飛び越えた攻撃を放たれるのが辛い。こちらから取れる対処は「ゲーム機をぶち壊す」と言う痛み分け、むしろ大損と言う手法しかないので泣き寝入りするしかない。感情のない相手に勝つことは出来ないのだ。

 

僕に頭の悪さを突きつけてきたのは「怪盗B」と言うお調子ぶっこいた感じの性格をしている怪盗で、物を盗んで隠し、その隠し場所を暗号で伝え、右往左往しながら探す様をほくそ笑みながら見守ると言う嫌なやつだ。多分もっと深い理由があるんだろうけど今のところはそういう奴だ。

暗号は「赤と黒が踊る舞台で待つ」みたいな内容の物であり、答えは「カジノのルーレット」と言う単純な物だったのだが、僕の脳みそが複雑怪奇な構造をしていたせいでここで三日ほど詰まった。

一応言い訳をさせて貰うとタイミングも悪かったのだ。

丁度この時、ゲームの中で孤児院が放火されて全焼すると言うショッキングな事件が起きており、そこにこの暗号が来た為、名探偵である僕は即座にピーンと来てしまった。

 

「ははぁん。赤(炎)と黒(煙)が踊る舞台ねぇ~」となってしまったのである。

そしてわざわざモンスターが蔓延る街道を抜けて火災現場まで急行したのだが、当然何もない。

ない訳はない!と信じて、焼け跡地を歩き回り、一歩進むごとに丸ボタンを連打すると言う作業を延々と続けていた。途中で「間違えた…?」と感づき、また街道を通って町に戻ったりしたのだが、暫く考えているとどうしても「やっぱり火災現場だ!」と言う結論に至ってしまい、無意味にウロウロしてしまっていたのである。

 

しかし全く孤児院に反応が無いため「…バグか?」とゲームの不具合まで疑い始めた僕は最後の手段として弟に相談し、「世界よ。これが大爆笑だ」と言うような大爆笑をされた。

人が悩みに悩んだ末、恥を忍んで正解を教えて欲しいと言っているのに、弟はそんな事は知ったこっちゃねぇとばかりに死にかけのバッタのようにプルプル震えながら笑い続け、やっと笑いが収まり答えを教えて貰えるかと思ったら「お前不謹慎すぎんだろ」と普通にごもっとも過ぎる指摘を食らった。

「なぞなぞの答えに放火現場持ち出すとかないわー」「サイコパスじゃん」と散々に言われた挙げ句に「まぁ自分で考えて分からなかったら諦めて進めちゃうのがいいんじゃん?」と突き放された。恐るべし塩対応である。散々迷走の限りを尽くした兄にこの仕打ち。我が家には鬼がいる。

 

すっげぇ悔しかったので、その後自力で答えまでたどり着き弟に嬉々として報告し鼻の穴を膨らませながらドヤったのだが、イヤホンも外さず「普通じゃん?」と返された。

我が家には鬼がいる。

 

そして今、新たな暗号を目の前に出された僕はゲームの進行を放置しているのである。

まだ頓珍漢な解答を叩きだし弟に笑われるなら救いようがあるが、今回の暗号、マジでビタイチ分からない。

「バカじゃん?」と言われて突き放されるのがオチと分かりつつ、弟に答えを聞いてみたい欲がプンプン沸いてきているので、これが爆発する前になんとか自力で解答にたどり着かなければ…と思ってはいるのだが。

あまりに分からないので、とりあえずその辺にいる野生の魔物を片っ端から殺して回っている。

なぞなぞが解けないせいで、生態系が変わるのは不味いと判断した誰かがヒントの一つでも伝えてくれないだろうか?と待っているのだが、今のところアイテムが不必要に貯まっていくだけである。

最近、そもそもの主人公達の目的も忘れ始めた。潮時かも知れない。