もう一つの楽園

スイパラコラボにリベンジをした。

今回は男子一人スイパラではなく、仲間がいた。貰ったも同然である。

その女性はヒプノシスマイクに全然興味がないと言う点だけが不安ではあったが一人より二人、男より女である。

それに、同じものが好きならいいと言う物でもない。もちろん共通の話題で盛り上がれると言う利点はとても大きなものだが、この手のコンテンツでよく言われる「沼」と言うのは一人に一つ、特別なヴェルダースオリジナルのイマジナリーマーシュだ。

同じ沼に浸かっていると言うことはほぼ無く、深さや透明度、生息している生物まで何もかもが違く、また本人がどこまで沈んでいるかも分からず可能性は無限大、キミだけの最強の沼に浸かろう状態なのだ。同じ生物が生息していたとしてそいつらの左右的な物が違っただけで、互いの沼に火を放ちあう不毛な争いが始まってしまったりする。

お互いに平和主義者であったとしても、どこまで沈んでいるかは本当に難儀な問題であり、向こうが深く潜り過ぎていると相手が何を言っているのかさっぱり分からず、たまに「ゴポゴポ」と水面に浮かんできた水泡が弾けた時にかすかに聞こえる「トウトイー」等の囁きに耳を澄まさなければならなくなる。

その点全く知らない相手と言うのは安心だ。相手が心に沼を持っていないと言うのは湿地帯に正義の数だけ埋まっている地雷が一つもないと言うことである。両手を広げてハイジのようにクルクル回っても突如ドリフの音楽と共に地球が滅ぶと言う悲劇が起きないピースフルモードだ。耳を澄まさずカントリーロードを爆走してもチャラヘッチャラ、マキロンもばんそこエードも必要ない、セグウェイにもトゥクトゥクにも乗りたい放題だ。

とにかく、完全に油断出来る相手と共にスイパラに乗り込んだ。

相手は全然興味ないコンテンツのコラボにノコノコと付いてきてくれるめっちゃくちゃいい奴なので、「コースターが二つ欲しいとかなら私もコラボメニュー頼むけど…」と言ってくれたのだが、断った。さして美味しいものでも無いのである。僕の目にはトレジャーに見えていると言うだけで心に沼を持たない人からしてみれば、葉っぱを握りしめて「札束じゃ!札束じゃ!!」と喜び庭駆け回るやべぇ奴に見えていることだろう。

そんなものに500円と言うのも申し訳ないし、なんか個数制限がかかって無さそうだったので「やっぱりもう一枚欲しい」と思ったら追加注文すればいい話だ。

前回、心に沼を持つ乙女たちの清き精神を目の当たりにした僕はその反省を生かし、今回は「エナジードリンクと最中」を注文した。笑ったりもするまい。推しのメニューなのだ。笑ったりしたらバチが当たる。

気合いを込めて「エナジードリンクと最中」と言う何が悲しくてこれが500円なのか分からない商品の横に「1」と筆圧をかけまくって書いた後、コースターを引いたら見事に推しである観音坂独歩とこんにちはする事が出来た。やはり気合いである。

テンション高く「出た!出た!!」と、ヒプノシスマイクを全く知らない同行者に見せびらかすはしゃぎっぷりを披露してしまったがめっちゃいい奴なので「よかったね」と素直に言ってくれた。人の幸せを喜べる上にのび太よりも遥かに頭のいい女性である。シズカも放ってはおくまい。

心の持ちよう、願掛けの大切さを感じつつダイスに宿ってるかはともかく神様はいるかもな…等とスピリチュアルな事を考えながら席に着き瓦礫のようにケーキをお皿に持った後に意気揚々とグッズを買いに行った。

今の僕は…キている。エナジードリンクバフがかかっている今…無敵!と思い、アクリルスタンドを五個鷲掴み、真っ直ぐな瞳で勝負に出たのだが結果は惨敗であった。セブンチェリーチェリーと言った具合である。

まず、サマトキV3が速攻で顔を出してきた。懲りない奴だ。お前のバースデーはもう終わっただろ!と思いつつ次のを開けたら「もちろんいるぜ理鶯」ってな具合に理鶯が出てきた。ははぁん、読めた。次は入間さんがテンション高くやってくるな?と思ったのだが、出てきたのは一二三であった。

次に三郎が出てきて、前回出てきたのと合わせてブクロ三兄弟が揃った形になる。ついでにあの時交換が成立しなくてよかった…と思った。幻太郎推し女史の気高き精神に改めて感謝だ。

最後は何かな…と開けてみたら、再びの一二三であった。クソラック。

僕は「ひふどの民」なので「ははぁん、一二三の野郎…邪魔しに来やがったな!」等と一人で盛り上がったりしてまぁ結果としては楽しかったのだが、冷静になった瞬間に「推しにきて欲しかった」と言う当たり前の感想と共に肩を落とす羽目になった。

ちなみに僕の中の「ひふど」は付き合ってないひふどである。付き合ってない方がいいと思うのだ。圧倒的に。

付き合ってないのにやたら依存している。付き合ってないのにやたら執着している。付き合ってないのに同居している。そういうのが「イイ」と思う。

だって付き合ってたら「まぁ…付き合ってるんだもんな」ってなってしまう。

付き合ってもないのに「独歩をバカにされた瞬間に真っ先にマイクを持ち出す」所がいいのだ。ついでに付き合っても無いし恋愛感情も無いのに独歩が誰かと付き合おうとしたら完璧なディフェンスを見せて欲しい。

この最高にサイコにホットな異常性が付き合っていると「まぁ付き合ってるんだもんな。普通だよな」となってしまう。それは余りにももったいないと思う。今や世界の共通語MOTTAINAIもたいまさこ

個人的理想のシチュエーションは「観音坂独歩を狙う入間銃兎とそれを牽制する一二三、何も気づかずにポヤポヤしている独歩」だ。

 

………。何の話だったか。

アクリルスタンドが、サマトキと一二三の二つダブったと言う話だった。危ない危ない。

しかし、ダブったからと言って嘆く必要はない。前回、素人感丸出しながらもなんとか交渉成立させたのである。今回は2回目、しかも同行人あり。負ける気がしねぇ!

と、思ったのだが、回りを見渡してもグッズを出している商人達が一人もいない。

そんな筈は…と思いキョロキョロして見たのだが何回見てもいないのである。みんなコラボメニュー注文で貰ったのであろうコースターをテーブルに置いてあるぐらいの物で、スイーツの楽園を普通に楽しんでいた。

なぜどうしてなんでホワイなにゆえケーキなんて食べているんだいYOU達と混乱してしまったが、よく考えなくてもそれが正解である。ここはそういう店舗であり、僕もケーキをモグモグしているし、なんだったらアイスまで食べていた。

闇深き新宿と違って、ヨコハマのスイパラは実に平和な世界だったのだ。

スイパラがちゃんと本来の然るべき楽園の形として機能しているせいで聖戦に再び参戦しようと意気込んでいた僕は思いっきり足を挫いた形になった訳である。皆が楽しく和気藹々とスイーツの楽園を謳歌してる中一人だけ完全武装とは本当に恥ずかしい。

しかし、グッズをテーブルの上に出してもいない人たちに話しかけて「ようお嬢ちゃん、あんたは一体何のグッズを持ってるんだい?」等と声をかけて回るほどの勇気は流石に無い。仮にあったとしても、そんなのは完全に事案であり、一線を越えたら黙っていないあの人のお膝元でそんな真似は出来ない。

僕一人だけならまだいいが、今回はめっちゃいい奴である同行人がいるのである。

戦士と言えども人の子、何の関係もない人間を地獄まで道連れにするのは良心が痛む。

コースターでは推しが出た訳だしそれでいいじゃないかと自分を納得させ、武装を解除して普通にケーキをこれでもかと腹に詰め込んだ後、戦場と成り果てることのなかった楽園を後にしたのだった。

 

それにしても…ダブった一二三V2とサマトキV3…どうしよう…。